この記事は、以下のような人にオススメです。
こんにちは!Webディレクターのオスカーです。
とあるクライアントさんから、このようなことを聞かれました。
「他のベンダーさんから聞いた話やけど、ITMのことでGA4の新規ユーザー数が正確ではないので、Adobe Analyticsを使えばより正確に取得できる、という営業を聞いたのだが、本当かね?」
今日はこれをテーマに話したいと思います。
特に、「GA4の新規ユーザー数の正確性」という問題を抱える方には必見の記事です。
最後までご覧いただけますと幸いです。
他の記事を見てない方のために、まずは背景の話をします。
GA4は新規ユーザーの判断するには、クッキーという技術を使っています。
ウェブサイトにアクセスされた際に、ブラウザに対し、クッキーを確認します。
初回訪問の場合、クッキーが見つからないので、新規ユーザーとして判断し、新しいクッキーを書き込みます。
クッキーを見つけた場合、リピーターとして判断します。
このクッキーのことを「個人情報だ!」と言って、Apple社はSafariに対し、ITP(Intelligent Tracking Prevention)という機能を実装した。
Safariを使っているユーザーのプライバシーを保護するために実施するトラッキング制限機能です。
以下がITPによる主な影響と、セッション管理の課題です:
これらの影響により、GA4のようなクライアントサイド依存のトラッキングでは、以下の課題が発生します。
さて、Adobe Analyticsを使えば新規ユーザーがより正確に判断できるのはなぜか?
Adobe Analyticsでは、新規ユーザーを以下の方法で識別しています。
カスタム訪問者IDは、つまりGA4のuser_idと同じ、サイト側からID情報を渡す方法です。
気になるのはECIDという機能ですが、これはどうしてITPの影響を低減できるか?
ECIDの仕組みとサーバとの関連
ECIDはAdobeのサーバー側で生成・管理される識別子で、クッキーを補完する形で動作します。
初回訪問時にサーバー側で一意のECIDが生成され、ユーザーのデバイスにクッキーとして保存されます。
??ユーザーのデバイスに保存??それじゃ普通のcookiesと何が違うのか?
ECIDはAdobe Experience Cloudで保存されることによって、デバイス側に記録されているクッキーが違ってもECIDで一貫性を保たれる。
つまり、同じユーザーの場合は統一されるという意味です。
何をもって同じユーザーと判断されるかというと、Adobe製品が使用されているIDです。
サイト利用されているユーザーが他のAdobe製品を使用場合に統一されます。
Adobe AcrobatやAdobe Creative Cloud(Photoshop、Illustratorなど)を含めたAdobeアカウントのログインが必要なAdobe製品です。
つまりどういう事かというと、利用者がAdobe製品を使用している場合は同一ユーザーとして判断はできますが、
特段利用されていない、またはPDFなどのようなツールで利用してても、ログインはしていない場合、ECIDはあまり意味がないです。
これはGoogleシグナルと似た仕組みでした。
GoogleシグナルはGoogle製品で判断したに対し、ECIDはAdobe製品で判断した、の違いです。
補足:Google SignalsにおけるID識別子の機能は2024年2月12日に廃止された。
冒頭に、「他のベンダーさんから聞いた話やけど、ITMのことでGA4の新規ユーザー数が正確ではないので、Adobe Analyticsを使えばより正確に取得できる、という営業を聞いたのだが、本当かね?」の回答は、
ECIDはある程度、ITP対策として成り立つが、ユーザーがAdobe製品を使用していることが前提としているので、効果が低いと言えます。
じゃ、Google側は?
Google SignalsにおけるID識別子の機能は2024年2月12日に廃止された。
新規ユーザーの追跡はもうあきらめるしかないか?
Google側もITP対策として提示しています。
それがサーバーサイドGTMです。
サーバーサイドGTMを活用することで、クッキーはサーバー側に生成します。
ユーザーブラウザ側にはファーストパーティクッキーを残し、ユーザーを照合します。
むむむっ!
結局クッキーを残しているじゃん、ITPによってクッキーが削除されたら終わりなのでは?
説明します。
まず同一ユーザーを判断するため、何かしら残さないといけないことは理解してください。
また、サーバーサイドGTMで運用する場合、ファーストパーティクッキーだけでなく、
ブラウザキャッシュやURLパラメータを使って、同一ユーザーを判断できる仕組みも可能になります。
カスタマイズが必要ですが、この2つの情報を利用して、同一ユーザーで判断した場合、
UUIDを再設定することで、識別の継続性が保たれます。
ここまで説明した
あくまでユーザー側で一時的に情報を保存して、それを依存する手段になります。
これらを依存しない手段はあるでしょうか?
もちろん、あります。
サーバーサイドGTMはカスタマイズ性が高く、他の情報を基に同一ユーザーの判断も可能です。(ただし、結構費用かかりますよ)
ログイン情報(つまりuser_id)やIPアドレス+User-Agentの情報を、サーバーに保存されているUUIDと紐づけることによって、精度を高めることが可能です。
そして、最も費用がかかる方法を紹介します。
それがAI/機械学習です。
サーバーサイドGTMで収集したデータ(IP、User-Agent、過去の訪問データなど)をデータベースやBigQueryに送信して、機械学習モデルを適用することで、データの類似性を分析して同一性を推測する方法です。
ここまでたくさん方法を説明しましたが、結局どの方法も100%にすることはできません。
多少精度を上げたい場合はサーバーサイドGTMをおすすめします。
ブラウザキャッシュとか、URLパラメータとか、カスタマイズせず、サーバーサイドGTMタグを導入することが、
多少の精度をあげつつ、コスパが最もよい方法です。
以下にAdobe AnalyticsとサーバーサイドGTMの導入費用を比較します。
項目 | Adobe Analytics | サーバーサイドGTMを使ったGA4 |
---|---|---|
年間費用 | 300万~1000万円以上 | 数万円~数十万円 |
トラッキング精度 | 高い | サーバーサイド運用で高精度可能 |
デバイス間トラッキング | 標準サポート | カスタム実装で対応可能 |
導入コスト | 高い(設定・ライセンス費用) | 低い(GTMで簡単に導入可能) |
対象企業 | 大規模企業、予算に余裕がある企業 | 中小規模サイトやコスト重視の運営者 |
※ウェブサイトに発生するイベント数によって費用が変動します
Adobe AnalyticsとサーバーサイドGTMの比較を通じて、新規ユーザー数の計測精度を改善する方法をご紹介しました。
Adobe Analyticsを利用するか、GA4をサーバーサイドで活用するか、運営規模や予算に応じて選んでください。
少しでも参考になれば幸いです。
今日も見ていただきありがとうございました。
それでは。