GA4:Adobe Analyticsを使えば新規ユーザー数が正確になる?|サーバーサイドGTMのことも
POINT

この記事は、以下のような人にオススメです。

  • Adobe Analyticsの精度を知りたいマーケッター
  • GA4での新規ユーザー数のズレに悩む担当者
  • サーバーサイドトラッキングの導入を検討している人
オスカーの似顔絵

こんにちは!Webディレクターのオスカーです。

とあるクライアントさんから、このようなことを聞かれました。
「他のベンダーさんから聞いた話やけど、ITMのことでGA4の新規ユーザー数が正確ではないので、Adobe Analyticsを使えばより正確に取得できる、という営業を聞いたのだが、本当かね?」

今日はこれをテーマに話したいと思います。

特に、「GA4の新規ユーザー数の正確性」という問題を抱える方には必見の記事です。
最後までご覧いただけますと幸いです。

 

ITPの背景とセッション管理の課題

他の記事を見てない方のために、まずは背景の話をします。

GA4は新規ユーザーの判断するには、クッキーという技術を使っています。
ウェブサイトにアクセスされた際に、ブラウザに対し、クッキーを確認します。

初回訪問の場合、クッキーが見つからないので、新規ユーザーとして判断し、新しいクッキーを書き込みます。
クッキーを見つけた場合、リピーターとして判断します。

このクッキーのことを「個人情報だ!」と言って、Apple社はSafariに対し、ITP(Intelligent Tracking Prevention)という機能を実装した。
Safariを使っているユーザーのプライバシーを保護するために実施するトラッキング制限機能です。

以下がITPによる主な影響と、セッション管理の課題です:

  • クッキーの寿命制限: ファーストパーティクッキーであっても、有効期限が短縮される(例:24時間~7日間)。
  • サードパーティクッキーの廃止: 広告トラッキングやリターゲティングに影響。
  • セッション分断: クッキーが無効化されると、ユーザーが同じ訪問内で再認識されることがなくなり、新規セッションとして計測される。

これらの影響により、GA4のようなクライアントサイド依存のトラッキングでは、以下の課題が発生します。

  • セッション数が増加し、正確な分析が困難になる。
  • 新規ユーザー数が実際より多くカウントされる。
  • コンバージョンパスが断片化され、マーケティングの最適化が難しくなる。

Adobe Analyticsの新規ユーザー計測方法

さて、Adobe Analyticsを使えば新規ユーザーがより正確に判断できるのはなぜか?
Adobe Analyticsでは、新規ユーザーを以下の方法で識別しています。

  • Experience Cloud ID(ECID): Adobe全体で統一されたIDで、クッキー削除の影響を低減し、デバイス間での一貫性を実現。
  • カスタム訪問者ID: 会員IDなどを利用して独自にトラッキング。

カスタム訪問者IDは、つまりGA4のuser_idと同じ、サイト側からID情報を渡す方法です。
気になるのはECIDという機能ですが、これはどうしてITPの影響を低減できるか?

ECIDの仕組みとサーバとの関連
ECIDはAdobeのサーバー側で生成・管理される識別子で、クッキーを補完する形で動作します。

初回訪問時にサーバー側で一意のECIDが生成され、ユーザーのデバイスにクッキーとして保存されます。

??ユーザーのデバイスに保存??それじゃ普通のcookiesと何が違うのか?

ECIDはAdobe Experience Cloudで保存されることによって、デバイス側に記録されているクッキーが違ってもECIDで一貫性を保たれる。
つまり、同じユーザーの場合は統一されるという意味です。

何をもって同じユーザーと判断されるかというと、Adobe製品が使用されているIDです。
サイト利用されているユーザーが他のAdobe製品を使用場合に統一されます。
Adobe AcrobatやAdobe Creative Cloud(Photoshop、Illustratorなど)を含めたAdobeアカウントのログインが必要なAdobe製品です。

つまりどういう事かというと、利用者がAdobe製品を使用している場合は同一ユーザーとして判断はできますが、
特段利用されていない、またはPDFなどのようなツールで利用してても、ログインはしていない場合、ECIDはあまり意味がないです。

これはGoogleシグナルと似た仕組みでした。
GoogleシグナルはGoogle製品で判断したに対し、ECIDはAdobe製品で判断した、の違いです。
補足:Google SignalsにおけるID識別子の機能は2024年2月12日に廃止された。

ITPとしての対策?

冒頭に、「他のベンダーさんから聞いた話やけど、ITMのことでGA4の新規ユーザー数が正確ではないので、Adobe Analyticsを使えばより正確に取得できる、という営業を聞いたのだが、本当かね?」の回答は、

ECIDはある程度、ITP対策として成り立つが、ユーザーがAdobe製品を使用していることが前提としているので、効果が低いと言えます。

じゃ、Google側は?
Google SignalsにおけるID識別子の機能は2024年2月12日に廃止された。
新規ユーザーの追跡はもうあきらめるしかないか?

Google側もITP対策として提示しています。

それがサーバーサイドGTMです。

サーバーサイドGTMでの運用方法

サーバーサイドGTMを活用することで、クッキーはサーバー側に生成します。
ユーザーブラウザ側にはファーストパーティクッキーを残し、ユーザーを照合します。

むむむっ!

結局クッキーを残しているじゃん、ITPによってクッキーが削除されたら終わりなのでは?

 

説明します。
まず同一ユーザーを判断するため、何かしら残さないといけないことは理解してください。

また、サーバーサイドGTMで運用する場合、ファーストパーティクッキーだけでなく、
ブラウザキャッシュやURLパラメータを使って、同一ユーザーを判断できる仕組みも可能になります。

カスタマイズが必要ですが、この2つの情報を利用して、同一ユーザーで判断した場合、
UUIDを再設定することで、識別の継続性が保たれます。

一時保存情報情報を依存しない手段

ここまで説明した

  • ファーストパーティクッキー
  • ブラウザキャッシュ
  • URLパラメータ

あくまでユーザー側で一時的に情報を保存して、それを依存する手段になります。

これらを依存しない手段はあるでしょうか?
もちろん、あります。

サーバーサイドGTMはカスタマイズ性が高く、他の情報を基に同一ユーザーの判断も可能です。(ただし、結構費用かかりますよ)
ログイン情報(つまりuser_id)やIPアドレス+User-Agentの情報を、サーバーに保存されているUUIDと紐づけることによって、精度を高めることが可能です。

そして、最も費用がかかる方法を紹介します。
それがAI/機械学習です。
サーバーサイドGTMで収集したデータ(IP、User-Agent、過去の訪問データなど)をデータベースやBigQueryに送信して、機械学習モデルを適用することで、データの類似性を分析して同一性を推測する方法です。

おすすめの方法はどれ?

ここまでたくさん方法を説明しましたが、結局どの方法も100%にすることはできません。
多少精度を上げたい場合はサーバーサイドGTMをおすすめします。

ブラウザキャッシュとか、URLパラメータとか、カスタマイズせず、サーバーサイドGTMタグを導入することが、
多少の精度をあげつつ、コスパが最もよい方法です。

以下にAdobe AnalyticsとサーバーサイドGTMの導入費用を比較します。

項目 Adobe Analytics サーバーサイドGTMを使ったGA4
年間費用 300万~1000万円以上 数万円~数十万円
トラッキング精度 高い サーバーサイド運用で高精度可能
デバイス間トラッキング 標準サポート カスタム実装で対応可能
導入コスト 高い(設定・ライセンス費用) 低い(GTMで簡単に導入可能)
対象企業 大規模企業、予算に余裕がある企業 中小規模サイトやコスト重視の運営者

※ウェブサイトに発生するイベント数によって費用が変動します

おわりに

Adobe AnalyticsとサーバーサイドGTMの比較を通じて、新規ユーザー数の計測精度を改善する方法をご紹介しました。
Adobe Analyticsを利用するか、GA4をサーバーサイドで活用するか、運営規模や予算に応じて選んでください。

少しでも参考になれば幸いです。

今日も見ていただきありがとうございました。
それでは。

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